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不育症とは、2回以上連続する流産・死産を繰り返してしまう『状態』であり、3回以上連続流産する習慣流産と、2回連続流産する反復流産を含んでいます。
 不育症の診断と治療の困難な点は、妊娠していない時点で、次の妊娠において流産の原因になる危険因子を予測して、その危険因子による流産が切迫する以前に予防治療する必要があることです。また、その危険因子には、身体的因子と精神的因子の両面があることです。つまり、不妊症の治療とは次元が違う予防医療の領域になるわけです。ですから、実際の診療の場においては、複数の疑い病名による保険の適用検査と自費検査を組み合わせて行い、また治療においても、自費治療が必要な場合がよくあるのです。これは、なかなか保険医としてはデリケートな問題を含んでいます。
  そもそも、『不育症は病気である。』と言いきれるのかという難問に直面します。日本の現時点での『保険病名』としては『不育症』という病名はありませんので、原則として保険診療は出来ません。また、『ICD-10国際疾病分類』にも記載されておりません。しかし、平成8年発行『厚生省・日本医学会監修の診療科別標準疾病名集』には、病名として『不育症』が記載されています。また、臨床統計研究において、流産回数別の無治療における次回流産率調査結果では、2回以上連続流産後の次回流産率が有意に高くなっています。
  ですから、『不育症』は病気として考えられますが、保険上のことを考えると現時点では、一般的な病気とは言えないと思います。ただし、『習慣流産』は『ICD-10国際疾病分類』に記載されており、一部ですが保険が適用される検査もあります。
多くの報告より、妊娠女性の2~5%に反復流産(2回連続流産)が発生し、1~2%に習慣流産(3回以上連続流産)が発生しています。私(青木院長)たちによる1980年と1981年の2年間に名古屋市立大学病院を受診したすべての患者さんの調査結果では、2回連続流産の発生率は3.1%、3回連続流産の発生率は1.8%でした。それぞれを偶然的確率で計算してみると、2回連続流産は2.3%(15%×15%)、3回連続流産は0.34%(15%×15%×15%)であり、名古屋市立大学病院での調査結果の方が、偶然的確率より高い結果となりました。
  よって、2回以上連続流産した患者さんにおいては、連続的原因(必然的危険因子)による反復流産の割合が高く、検査・治療が必要と考えられます。しかし一方では、無治療において生児が得られる確率も高いことも事実です。
表1は私(青木院長)たちの調査も含めた「過去の連続した流産の回数とその後の無治療による流産率の関係」を示したものです。この表からわかるように、2回連続流産後の次回流産率(無治療の場合)は36~44%であり、連続流産回数が増えるに従って流産率の上昇が認められます。よって、2回以上の連続流産を経験した女性においては高い流産発症リスクが存在していると考えられます。
表1 過去の連続した流産回数とその後の流産率の関係
過去の連続した
流産の回数
その後の流産率(%)
マルパス
(1938年)
青木ら*
(1980~1981年)
アルバーマン**
(1988年)
0 18 14 12
1 22 32 13
2 38 44 36
3 73 45 -
4 - 62 -
5 - 73 -
*免疫療法がおこなわれる以前の1980年と1981年に、名古屋市立大学病院の産婦人科を
受診したすべての婦人(対象は5,779名)について調査した
**3回妊娠した経験をもつ英国の女性医師(対象は742名)について調査した

不育症の原因には、偶発的原因と必然的原因が混在していることが多く、ひとつの原因で過去の連続した流産すべてを説明できるケースはほとんどありません。

ですから実際的には、検査した時点での流産危険因子(原因)の有無をできるだけ広く深く調べて、その異常による次回の流産の危険率を検討して、予防治療することになります。表2は、不育症の危険因子別頻度とその流産危険率(予測値)を示したものです。

表2 不育症の危険因子別頻度とその流産危険率
  検査異常の種類 頻度(%) 流産危険率(%)
A.身体的異常
    □ 染色体異常

胎児の染色体異常
妻の染色体異常
夫の染色体異常

15~20
4
3

   90~
~40~
~40~
    □ 子宮異常 子宮奇形
子宮筋腫
子宮腔癒着症
子宮内膜ポリープ
2
2
1
1
~50~
~40~
~70~
~50~
    □ 内分泌異常 卵巣の黄体機能不全
高プロラクチン血症(含:潜在性)
甲状腺機能低下症
糖尿病(含:境界型)
21
25
3
1
~40   
~50~
~50~
~40~
    □ 凝固系異常 プロテインC、S活性、第12因子低下 12 ~50~
    □ 免疫異常
        △ 自己免疫の異常
        △ 母児間免疫の異常
抗リン脂質抗体
抗核抗体
高ナチュラルキラー細胞活性
形質転換増殖因子高値
マクロファージコロニー刺激因子低値
17
18
15
9
18
~80~
~30   
~70~
~50~
~50~
B.精神的異常 不安障害 30 ~50~

(青木らによる調査結果より、2008)

近年、多種類の危険因子が混在した流産の存在が注目されています。精神―神経系・内分泌系・免疫系・凝固系のネットワークの破綻によると考えられる流産のことです。その破綻により、ひとつには子宮内血管の虚血による胎児死亡と、もうひとつに胎盤内腔の高圧による胎児圧迫死の可能性です。

たとえば、あるストレス状態の時、視床下部から神経伝達物質としてのセロトニンが多く分泌され、その刺激により下垂体前葉よりプロラクチンの分泌が促進されます。妊娠初期において、プロラクチンは子宮内の免疫細胞を活性化させ、ある免疫伝達物質(TNF-α)が放出されます。その物質は胎盤組織における血管内皮細胞の障害を引き起こすので、凝固系が活性化し、微少血栓形成による虚血が誘導され、胎児死亡が引き起こされると考えられます。

また、あるストレス状態の時、女性ホルモンの分泌が不十分になったとすれば、細胞性免疫が活性化して、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性が亢進されます。さらにアドレナリン分泌の亢進によってもNK細胞は活性化されます。このNK細胞活性が亢進すると子宮内の血管内胎児細胞のプラグ形成が障害されて、その結果、胎盤内腔の高圧が誘導され、胎児圧迫死が引き起こされると考えられます。

まず、「不育症の治療においては1回の妊娠につき100%の成功率を期待することは不可能です。」という真理を理解してください。なぜならば、たとえ夫婦の染色体異常はなくても、偶発的な胎児の致死的染色体異常が15~20%の頻度で出現すると推定されているからです(表2参照)。ですから、たとえ理想的な治療においても、その成功率は1回の妊娠につき80~85%であると考えられます。

次に、夫婦どちらかに染色体の異常が判明した場合、「染色体異常だから子供をあきらめる。」とする必要はまったくありません。最近の研究報告(2008年、日本の多施設研究)によると、均衡型相互転座保因者であっても、それによる流産発症危険率は約40%です。つまり、それ以外の精神的あるいは身体的原因を治療することにより、約60%の成功率が期待できるわけです。実際に、私(青木院長)がこれまでに治療した染色体異常のご夫婦(50組以上)の1回の妊娠についての成功率は約50~60%でした。

1800年代後半の米国産科学教科書の中で、すでに、「大きなストレスがその後の妊娠を流産させるかもしれない」ことが記載されています。その後、1954年に初めて米国の研究者が「ストレスと不育症」の密接な関係を発表して以来、支持的精神療法によって不育症治療の成功率が有意に上昇したとする臨床研究が複数の国より報告されています。1995年、動物実験においても、ストレスにより免疫異常が発生して流産することが証明されています。筆者(青木)らの研究チームは、1994年よりストレスによる不育症の実態を研究しており、原因不明不育症患者さんの妊娠極初期(4~5週)に半構造化面接を行いました。その結果、抑うつ状態、悲観的思考、社会的支援への不満を持つ人は、持たない人に比べて有意に高率に流産されています。詳細は、2004年に、ヨーロッパの精神医学専門誌に発表しました。
不育症患者さんにおける子宮の形態異常の種類別頻度は表2に示してあり、全体で約6%です。 子宮奇形のなかで、双角子宮と中隔子宮については一般的に手術を第一に薦められる傾向にありますが、私はまずは手術せずに、それ以外の心身の流産危険因子を詳しく調べて、その異常項目を治療することをしてきました。その結果、現在までに20例以上の症例について約70%の出産例を経験しています。弓状子宮についてはほとんど異常ありません。子宮筋腫についても手術は最後の最後の選択肢と考えられます。最近では子宮ファイバー検査の進歩(痛みがなく、外来で簡単に検査可能)により、子宮腔癒着症あるいは子宮内膜ポリープが稀ではなく見つかっています。不育症の原因のひとつですので、まずは子宮ファイバー検査を受けるべきです。子宮内膜症(生理痛がひどい)は、不妊症のみならず、不育症の原因としても考えられていますが、その機序は未だ不明です。

ホルモン(内分泌)異常の多くは、卵巣の黄体機能不全か高プロラクチン血症です。近年の多くの研究報告により、黄体機能不全はそれ自体ではその後の流産の危険因子ではないようですが、実験的な研究結果では、卵巣から分泌される黄体ホルモンはリンパ球のT細胞に作用して、妊娠維持に有利な免疫状態に誘導することが判明しています。よって、ホルモン異常は、精神―神経系・内分泌系・免疫系・凝固系のネットワークの破綻を誘導することにより流産を引き起こしていると考えられます。このことより、妊娠初期の黄体ホルモン治療は補助治療として効果があるものと思われます。

同様に、プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)も精神―神経系・内分泌系・免疫系・凝固系のネットワークに深く関わっています。高プロラクチン血症は妊娠維持にとって不利な免疫状態に誘導することが判明しています。プロラクチンは別名、愛情ホルモンあるいはストレスホルモンとも言われており、ストレスによっても微妙に高くなる傾向があります。よって、精神―神経系・内分泌系・免疫系・凝固系のネットワークの異常に対しては、精神療法、ホルモン療法、免疫療法、あるいは抗凝固療法の併用療法がさらに治療効果を高めるものと考えられます。

甲状腺機能低下症の場合は血流が悪くなり、冷え性、凝り性、低血圧、朝が弱いなどの症状がよくあります。同時に子宮内の血流も悪いわけですから、子宮内の胎児にはよくありません。免疫異常による甲状腺機能低下症も稀ではありません。2006年にはイタリアの臨床研究施設から、積極的な甲状腺薬の治療により有意な流産予防効果があったことが報告されています。

抗リン脂質抗体については、1985年頃よりよくわかってきました。わかってきたきっかけは、もともとSLEという自己免疫病(膠原病)の女性は流産率が高いという現象がわかっていましたが、その中でも、抗リン脂質抗体という自己抗体を持っている婦人に特に流産率が高いことが判明しました。それがきっかけです。その後、普通の婦人においても抗リン脂質抗体をもっているとよく流産することがわかってきました。抗リン脂質抗体というのは自己抗体です。抗体というのは、外界からの侵入物に対して反応する免疫グロブリンのことですが、自己抗体というのは、自分自身のタンパク質にも間違って反応してしまう抗体のことです。女性は男性に比べて自己抗体を作りやすいと考えられています。その理由のひとつとして、女性は精子という異物を身体のなかに受け入れる機会がありますので、異物にさらされやすい環境にあるということです。もうひとつの理由は、妊娠した場合、その胎児細胞というのは半分が夫由来ですが、残りの半分は自分自身でもありますので、そこで間違って自己抗体を作ってしまいやすい環境にあるということです。

自己抗体の代表格である抗核抗体は不育症患者さんに高頻度(約18%)に認められますが、それ自体が流産発症に直接関与していることはないようです。抗リン脂質抗体は不育症患者さんの約17%に出現し、流産率(流産発症危険率)は約80%と推定されています(表2参照)。ところで、その抗リン脂質抗体については、現在10種類以上も検査可能です。しかし、その種類別とその抗体価別の流産率については、いまだ臨床研究の途中ですので不明確な点が残っています。ですから、その治療対象とその治療方法についても、不育症の専門医によりまちまちです。また、検査の一部は保険でできますが、多くの検査とその治療については自費となっています。

妊娠反応が陽性になった後、性器出血があった場合、ほとんどの不育症患者さんはびっくりして悲観的になってしまいます。また流産ではないかとパニック的に緊張してしまいます。そして身体的安静のため寝込んでしまうかもしれません。さらに緊急に一般病院を受診して、流産の可能性もあることを説明され、止血薬を処方されるかもしれません。しかしこの場合、出血の原因が血栓形成亢進状態(あるいは抗リン脂質抗体陽性)によるものであったならば、その処置は逆効果かもしれません。血栓傾向を持つ妊婦さんが性器出血した場合、子宮胎盤循環内微少血栓により胎のう周辺に小血腫が出現し性器出血しているとも考えられるので、そのような状況のときに止血薬を服用すると血栓をより安定化させてしまい、出血は止まったが流産させてしまったことにもなる危険性があるからです。不育症の原因として血栓形成亢進状態は表2に示しましたように、約12%認められています。血液凝固機序とその抑制機序は図1のごとく複雑ですが、主には、第12因子低下、プロテインC活性低下、プロテインS活性低下という原因が報告されています。反対に、止血剤治療が流産予防になる場合もあります。その主な原因は、先天性無線維原血症と先天性第13因子欠損症ですが、この頻度は1%以下で非常にまれです。ですから、安易に止血薬治療を受けるべきではないと思います。さらに出血のよる流産への恐怖心と悲観的感情のまま寝込んでしまった場合、子宮内のらせん動脈が緊張により細くなり、胎児への血流が不足して流産してしまうかもしれません。ストレスにより血小板の機能は亢進しますから、血栓形成亢進状態にもなってしまいます。また、過剰なホルモン薬は血栓形成亢進状態を助長してしまいます。
図1 血液凝固機序とその抑制機序
図1 血液凝固機序とその抑制機序

受精卵、新鮮胚、胚盤胞、胎芽、胎児は、なぜ拒絶されないのでしょうか。半分は旦那さんの組織ですから、生物学的に考えれば異物ですので、拒絶(流産)されるのが普通のはずです。1953年、英国の免疫学者、メダワー卿が、外科的な移植手術を成功させるためにも、この謎解きに挑戦したのが、現在の生殖免疫学の始まりなのです。この挑戦は現在も、世界中の多くの生殖免疫学者により進行中です。

私も1978年より現在もその研究に参加しています。この分野において、ここ30年間で最も臨床的に刺激的な研究発表は、1981年に英国と米国からそれぞれ同時に発表された二つの研究論文です。繰り返して流産してしまう不育症の患者さんに対して、ひとつは他人の白血球輸血をする、もうひとつは夫のリンパ球注射をすると、それぞれが妊娠維持に成功したとする論文です。実は、これらの論文が発表される以前に、移植免疫の分野で非常に参考になる現象が報告されていました。それは、腎臓移植する直前に全身状態をよくするため、しばしば輸血しなければならない症例がありますが、輸血した症例は、しないでもよかった症例より、有意に移植の成功率が高かったという報告です。この現象は現在でも多くの研究機関で支持されています。

私は、1983年に日本で最初の成功例を経験しています。その後、日本においては、厚生省研究班として約6年間、主要な研究機関の実態調査がされて、1992年に最終報告書が提出されました。その結果では、約800例の治療した対象者に対して調査され、成功率は約80%でした。比較対照としての治療しなかった症例の成功率は約40%でした。治療による有意な副作用もなく、出生児の3歳時までの追跡調査においても、特別な異常は認められませんでした。これが、日本の多施設での行政研究報告です。しかし、この参加施設では、十分な説明と安全対策がされていたことは特記すべき点です。

世界的にも、1993年のワシントン会議において、11カ国14施設の無作為二重盲検試験430症例を含んだ約1500症例が検討され、その有効性が証明されました。しかし、その後の追跡調査では、1999年と2003年に、その有効性を否定する研究報告も発表されています。これらの矛盾点を解決する可能性のあるひとつの研究報告が2009年に、カナダのクラーク博士により発表されました。それは、有効性が認められなかった報告では、採血の翌日にリンパ球接種が行われていた点です。採血の翌日のリンパ球表面には、免疫寛容誘導分子CD200が失われていたことが証明されました。この治療方法の違いが有効性の違いの原因と考えられるのです。しかし、現在の米国では、はっきりとした有効性がいまだ確定していないので、標準治療法としては否定的見解です。たぶんその副作用、たとえばエイズ等の感染リスクも考慮された結果と思います。

それでは、現時点で、母児間免疫異常の有無を検査するためには、どのような検査がいいのでしょうか。研究室レベルでは、いろいろな免疫学的パラメーターが研究されていますが、費用と時間と再現性を考慮すると、ほとんどが実際的ではありません。私は、1995年にNK(ナチュラルキラー)細胞活性が拒絶反応の指標になることを、ランセットという臨床医学雑誌では世界的トップクラスの専門誌に発表しています。その研究データに基づき、NK細胞活性をその指標の中心として検査し、異常高値な患者さんに対しては、独自の方法でピシバニール免疫療法を行っております。その成功率は80%強です。また、M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)は、妊娠を維持させるための生殖反応に重要な働きをもっていることを、1997年、米国生殖免疫学会雑誌に報告しています。さらに、2000年には、難治性不育症患者さんに特に、TGF-β1(形質転換増殖因子)が異常に高値であり、それがひとつの難治性不育症の原因である可能性を、米国の臨床免疫学雑誌に報告しています。TGF-β1は炎症、免疫、組織修復に重要な役割を持つ物質なのです。これらNK細胞活性、M-CSF、TGF-β1の検査結果をみて、いろいろに修正した免疫療法を行っています。

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