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(12). 母体が胎児を免疫学的に拒絶すると不育症になります

受精卵、新鮮胚、胚盤胞、胎芽、胎児は、なぜ拒絶されないのでしょうか。半分は旦那さんの組織ですから、生物学的に考えれば異物ですので、拒絶(流産)されるのが普通のはずです。1953年、英国の免疫学者、メダワー卿が、外科的な移植手術を成功させるためにも、この謎解きに挑戦したのが、現在の生殖免疫学の始まりなのです。この挑戦は現在も、世界中の多くの生殖免疫学者により進行中です。

私も1978年より現在もその研究に参加しています。この分野において、ここ30年間で最も臨床的に刺激的な研究発表は、1981年に英国と米国からそれぞれ同時に発表された二つの研究論文です。繰り返して流産してしまう不育症の患者さんに対して、ひとつは他人の白血球輸血をする、もうひとつは夫のリンパ球注射をすると、それぞれが妊娠維持に成功したとする論文です。実は、これらの論文が発表される以前に、移植免疫の分野で非常に参考になる現象が報告されていました。それは、腎臓移植する直前に全身状態をよくするため、しばしば輸血しなければならない症例がありますが、輸血した症例は、しないでもよかった症例より、有意に移植の成功率が高かったという報告です。この現象は現在でも多くの研究機関で支持されています。

私は、1983年に日本で最初の成功例を経験しています。その後、日本においては、厚生省研究班として約6年間、主要な研究機関の実態調査がされて、1992年に最終報告書が提出されました。その結果では、約800例の治療した対象者に対して調査され、成功率は約80%でした。比較対照としての治療しなかった症例の成功率は約40%でした。治療による有意な副作用もなく、出生児の3歳時までの追跡調査においても、特別な異常は認められませんでした。これが、日本の多施設での行政研究報告です。しかし、この参加施設では、十分な説明と安全対策がされていたことは特記すべき点です。

世界的にも、1993年のワシントン会議において、11カ国14施設の無作為二重盲検試験430症例を含んだ約1500症例が検討され、その有効性が証明されました。しかし、その後の追跡調査では、1999年と2003年に、その有効性を否定する研究報告も発表されています。これらの矛盾点を解決する可能性のあるひとつの研究報告が2009年に、カナダのクラーク博士により発表されました。それは、有効性が認められなかった報告では、採血の翌日にリンパ球接種が行われていた点です。採血の翌日のリンパ球表面には、免疫寛容誘導分子CD200が失われていたことが証明されました。この治療方法の違いが有効性の違いの原因と考えられるのです。しかし、現在の米国では、はっきりとした有効性がいまだ確定していないので、標準治療法としては否定的見解です。たぶんその副作用、たとえばエイズ等の感染リスクも考慮された結果と思います。

それでは、現時点で、母児間免疫異常の有無を検査するためには、どのような検査がいいのでしょうか。研究室レベルでは、いろいろな免疫学的パラメーターが研究されていますが、費用と時間と再現性を考慮すると、ほとんどが実際的ではありません。私は、1995年にNK(ナチュラルキラー)細胞活性が拒絶反応の指標になることを、ランセットという臨床医学雑誌では世界的トップクラスの専門誌に発表しています。その研究データに基づき、NK細胞活性をその指標の中心として検査し、異常高値な患者さんに対しては、独自の方法でピシバニール免疫療法を行っております。その成功率は80%強です。また、M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)は、妊娠を維持させるための生殖反応に重要な働きをもっていることを、1997年、米国生殖免疫学会雑誌に報告しています。さらに、2000年には、難治性不育症患者さんに特に、TGF-β1(形質転換増殖因子)が異常に高値であり、それがひとつの難治性不育症の原因である可能性を、米国の臨床免疫学雑誌に報告しています。TGF-β1は炎症、免疫、組織修復に重要な役割を持つ物質なのです。これらNK細胞活性、M-CSF、TGF-β1の検査結果をみて、いろいろに修正した免疫療法を行っています。

最終更新日: 2016年05月24日 17:41

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