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Q20.アスピリンやヘパリン治療しても流産を繰り返しています。今度は、夫のリンパ球を輸血する治療をしてみましょうと言われたのですが、リンパ球輸血治療は否定的な意見もあると聞いています。どうしたらよいのでしょうか?

歴史的な背景から説明すると、わかりやすいと思います。不妊症と違って、不育症の原因は「運命」と「心」と「身体」に存在するため複雑であり、薬物治療するにも妊娠初期の治療となるため抵抗感があり、ほとんど研究されることなく放置されてきました。
そこに光を与えたのが、1981年のリンパ球輸血療法なのです。あっというまに世界的に広がり、その成功率は、平均70~80%でした。ただ、その治療方法と治療対象は千差万別だったのです。ですから当然、治療効果はないという論文も発表されました。そして、この治療法があまりされなくなった主な原因は、その副作用の点です。リンパ球輸血療法は、輸血のひとつですから、とくにエイズの問題なのです。1981年に米国で初めてエイズ患者が報告されて以来、年々増加し、その1%が輸血による感染でした。ですから、米国の食品医薬品局(FDA)は「夫リンパ球免疫療法は有効性と安全性が確認されるまではしばらく行うべきでない」と勧告しています。

日本では、1989年から3年間、厚生省研究班として臨床研究され、原因不明習慣流産患者への免疫療法の生児獲得率は79%であったこと、そして、2008年から3年間、厚労省研究班として再評価の研究がなされ、生児獲得率は71%であったことが報告されています。

ですから実際的には、抗リン脂質抗体、凝固系異常による原因も含めて、現時点では原因不明であり、また、ヘパリン・アスピリン治療も含めた従来の治療では効果なく、流産物の絨毛染色体検査では正常な症例に対して、十分な説明と同意のもと、放射線照射した夫リンパ球による免疫療法が、ひとつの選択肢としてあり得ると考えられます。

最終更新日: 2018年11月10日 16:21