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Q12.免疫異常の原因の有無について、Th1/Th2比という特殊な検査をしたのですが、どういう検査なのでしょうか?

免疫系の司令塔的な役割を持つヘルパーT(Th)細胞は、Th1とTh2の二種類あり、Th1細胞はインターフェロンγなど、Th2細胞はインターロイキン4などという情報伝達物質(サイトカイン)を産生しています。正常妊娠はTh2優位の現象であり、Th1の上昇は妊娠維持に不利であるという現象が明らかになってきています。この根拠に基づき、Th1/Th2比を検査して、Th1優位の患者に夫リンパ球免疫療法をすると、Th2優位へ変化して高い妊娠維持成功率が得られたという研究報告があります。

同じような特殊免疫検査として、細胞の増殖と分化を助けるCSFファミリーのなかのM-CSFを測定する検査があります。妊娠子宮の免疫細胞の約70%がNK細胞ですが、約20%がマクロファージであり、そのマクロファージがM-CSFも産生しているのです。妊娠マウスでは子宮内M-CSF濃度が約1000倍まで上昇しており、M-CSFが産生されないマウスでは出生数が非常に低いことが報告されています。ヒトにおいては、不育症の患者さんにM-CSF低値の方が存在し、その後の妊娠経過とも正の相関関係が認められています。

さらに、生体維持に非常に重要な役割を持つTGF-β1を測定する検査もあります。TGF-β1は血小板、胎盤、骨等に大量に存在し、炎症や免疫系を抑え、組織修復の線維化を促進します。難治性の不育症の患者さんの中に、このTGF-β1が異常に高い方が存在しています。年齢、流産回数の増加などにより、TGF-β1が異常高値となり、子宮内膜組織が固くなりすぎてしまった可能性が考えられるのです。また、細胞外マトリックスへの影響により、受精卵の着床現象にも深く関わっています。

最終更新日: 2018年11月10日 16:10