ストレス・免疫・ホルモン・凝固 100年以上前から、極度な不安、悲しみ、怒りという感情が、流産を繰り返すことと密接に関係していることはわかっていました。不育症の世界最初の研究論文が、1954年の「ストレスと習慣流産」です。 ストレスが不育症の単一の原因かどうかは未だ不明ですが、少なくとも危険因子のひとつです。その理由は二つあります。一つは、図1と図2のように、過剰なストレスがあると、胎芽へ酸素を送る「らせん動脈」が細くなり、虚血が起こるからです。また、もう一つは、ストレスと免疫とホルモンと凝固の深い関係により、たとえば免疫異常の背後にストレスも関与していることが多いのです。図1 妊娠5~6週の母児接点図図2 妊娠初期・中期の血管 神様の領域 流産には神様の領域があります。流産は、図3のように、年齢に比例して、妊婦さんの10~20%発生しており、そのうちの約60%が受精卵自体の治療不可能な偶然的染色体異常(神様の領域)によって起こっているからです。 しかし、流産を2回繰り返したならば、2回とも染色体異常で説明できる確率は36%と低下しますので、約60%の確率で連続する子宮内環境の異常(治療可能な異常)があると判断されます。 ですから2回流産されたならば不育症と定義されるのです。また、不育症の完全な治療をしたとしても、染色体異常は治療できませんので、出産成功率は1回につき約80~90%なのです。図3 妊娠後の胎児側の染色体異常率