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同種免疫

妊娠の成立と継続に重要な働きを持つ免疫のお話です。

ステロイドは1948年に開発され、
タクロリムスは1993年にステロイドより
強力な免疫抑制剤として開発されました。


薬の胎児への移行性(胎盤通過性)について、

プレドニゾロンというステロイドは
胎盤をほとんど通過しませんが、
タクロリムスはヒトで胎盤を通過することが
報告されています。
(Br. J. Clin. Pharmacol. 76(6): 988, 2013)

ステロイドについては、
必要量をコントロールしやすく、
健康な妊婦さんへの投与例は世界的に多数あり、
胎児への長期的な影響も問題ないようですが、

タクロリムスについては、
健康な妊婦さん(臓器移植を受けていない)への
投与例は現時点でわずかですので、
長期的な母児への影響が不安です。


妊婦さんへのステロイド治療について、
私は30年以上の治療経験があり、
副作用も含めて、
最良の治療効果を得る技量を持っている
と思っています。

免疫の働きは、異物を攻撃することです。
しかし、
胎児は半分異物ですが、
普通は攻撃されません。


その理由は、
ヒトの進化の過程で

胎児抗原(異物の標識)に対してだけは

局所的かつ特異的な
免疫の抑制機構が、
作られているからです。


現在判明しているその抑制機構とは、

胎盤の栄養芽細胞
(トロホブラスト)に特に多く発現する
特有なHLA―G抗原が(可溶性抗原もあり)
いろいろな免疫細胞の受容体に結合して、
NK細胞の細胞障害活性を阻害したり、
制御性T細胞を誘導したりして、
免疫寛容を誘導しているというものです。

 

しかし、いろいろな理由で
(たとえば、HLA-G抗原の発現が弱いとか、
免疫がHLA-G抗原に適切に反応できないとか)
免疫寛容が不十分なときには、

流産・着床不成功が連続する
可能性が高くなると考えられます。


免疫を全身的に抑制すれば治療
できるというものではありません。

移植(胚盤胞)後の5日目頃には
すでに子宮胎盤循環(母児間交流)が
始まりまっているのですよ。


移植5日目までの発育が順調ならば、
胎児側細胞から出るβ-hCG
というホルモン(妊娠検査薬)が
血液検査ですでに検出できるのです。

移植(胚盤胞)後の10日目頃には、
早朝尿でも検出されます。
(これが一般的に言う妊娠検査薬)


生殖・発生学的に見れば、

移植後、胚が子宮内膜に接着する
最初の約4日間における
不成功の子宮側の原因は、
未だブラックボックスですが、

移植後5日目頃からの不成功
の子宮側の原因には、

「妊娠の同種免疫異常と
生殖ストレスの
複合的原因」

が高頻度に存在している
と考えられます。


生殖ストレスと同種免疫の
詳しい検査をしたうえで、

ストレスのよる子宮内細動脈の収縮を防ぎ、
ストレスによる子宮内免疫の異常を防ぐ
ことが最大の治療になると思います。

子宮内や膣内のフローラ(細菌叢)を、
遺伝子検査できるようになってきましたが、・・・。

人間の粘膜(口や鼻や腸)には無数の常在菌があり、
エール大学のギル モア教授は、
「人間の体の常在菌が妊娠の継続に極めて重要である」
という有力な研究報告をしています。

2015年に「サイエンス」という権威ある医学誌に、
「寄生虫と妊娠継続の関係」が報告されました。

世界の10億人以上が何らかの寄生虫に
感染していると言われていますが、

回虫に感染していると、
感染していない婦人に比べて妊娠、出産率が高く、
十二指腸虫では逆に低いという内容です。

胚(受精卵)も子宮で寄生して育っているわけです。

つまり、
胚を受け入れる免疫と、
拒絶する免疫があると考えられるのです。


身体とこころの状態によって影響を受ける
子宮内フローラの検査は参考にはなりますが、

「胚へ直接的に影響を及ぼす免疫状態」
の詳しい検査と、
その治療が大切です。

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