免疫の働きは、異物を攻撃することです。しかし、胎児は半分異物ですが、普通は攻撃されません。 その理由は、ヒトの進化の過程で胎児抗原(異物の標識)に対してだけは局所的かつ特異的な免疫の抑制機構が、作られているからです。 現在判明しているその抑制機構とは、胎盤の栄養芽細胞(トロホブラスト)に特に多く発現する特有なHLA―G抗原が(可溶性抗原もあり)いろいろな免疫細胞の受容体に結合して、NK細胞の細胞障害活性を阻害したり、制御性T細胞を誘導したりして、免疫寛容を誘導しているというものです。 しかし、いろいろな理由で(たとえば、HLA-G抗原の発現が弱いとか、免疫がHLA-G抗原に適切に反応できないとか)免疫寛容が不十分なときには、流産・着床不成功が連続する可能性が高くなると考えられます。 免疫を全身的に抑制すれば治療できるというものではありません。