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子宮内膜炎

着床失敗と流産の直接的な原因は子宮の免疫異常であり、免疫異常を引き起こす主な原因が炎症であり、炎症の原因の一部が病原性感染です、というお話です。

半分異物である受精卵が
子宮内膜に侵入すれば、
免疫細胞が活性化して、
必ず炎症(軽度)が起こります。

生理的な免疫反応により、
受精卵側の絨毛細胞の分化に必須な
コロニー刺激因子(M-CSF)が
充満され、さらに血液が充血してきます。


ところが、
アレルギー、細菌感染等の
原因があれば、
異常な免疫反応(慢性子宮内膜炎等)
が起こり、
移植失敗、流産となるのです。


異常な免疫反応が起こっているかどうかは、
Th1/Th2 検査だけではわかりません。
NK細胞活性や、M-CSFや、
TNFα等の免疫検査が必要です。


その結果により、
たとえばタクロリムスのような
ステロイド以上に強力な
免疫抑制剤の治療は、
かえって悪循環になることがあります。

子宮内の細菌叢を調べる
遺伝子検査(EMMA/ALICE)の評価
については、現時点でも不明です。

善玉菌である乳酸菌と、
それ以外の悪玉菌も含めた細菌叢
の割合を調べることによって、
子宮内の環境状態はわかりますが、

少なくとも
不育症においては、
その後の妊娠率、流産率とも
関係なさそうです。


子宮内の細菌環境が悪い場合には、

詳細な免疫検査
(NK、TNFα、M-CSF等)と、
生殖ストレス検査をすれば、

抗生物質、ラクトフェリンなどの治療法以外に、

ピシバニール治療法やステロイド治療法、
さらに支持的精神療法

という専門的な治療の必要性の有無が
わかってきますよ。

正常な生理周期の子宮内膜の状態は
「生理的な炎症過程」 でもあります。

「炎症」 の基本的な検査は、
白血球の数です。


正常な女性の子宮内膜中の白血球数は、

排卵前と排卵数日後までは、
内膜細胞の10%弱ですが、

排卵後1週間頃より劇的に増加して、
妊娠初期には、
内膜細胞の約30%が
白血球細胞になっています。


子宮内膜症、子宮腺筋症、慢性子宮内膜炎は
病的な子宮内膜の炎症状態ですので、

白血球という免疫細胞が放出する
炎症性の物質を検査して
それが異常に増加していたら、

それを正常化することが、

不育症、着床障害の治療
になるのです。


なお、細菌感染は炎症の原因の
一部にすぎません。

 

ブログNo.487「妊娠子宮には白血球がいっぱい」
も参照してみてください。

最近、
慢性子宮内膜炎が
一つの話題になっています。

そのきっかけの一つが、
ブログNo.541で紹介した論文です。

子宮内膜液の遺伝子検査で、
無症状の人の子宮内膜にも
細菌が存在しているという内容には
驚きました。

膣内に細菌がいることは
教科書レベルではっきりしています。
そのほとんどが病原性のない常在菌です。


40年以上も前から、
病的な膣炎は、
不育症の原因ではないかと
多くの研究がされましたが、

結局、
一時的な流産の原因ではあっても、
繰り返す流産の原因ではないと
考えられています。


子宮内膜液の遺伝子検査でも、
細菌のほとんどが
乳酸菌という常在菌であり、

それ以外の細菌の遺伝子は
見つかっていますが、

その病原菌?が、
どれほど悪影響があるのかは
まだ不明です。


子宮内膜液の遺伝子検査以外の
以前より行われている検査では、

子宮内膜の表面を
子宮ファイバーで見るか、

子宮内膜の組織を採取して、
細菌培養して細菌を見つけるか、

子宮内膜の免疫組織染色検査で、
形質細胞(CD138陽性)を見つけるか、
の検査になります。


形質細胞は
免疫細胞のBリンパ球が分化した細胞であり、
同種免疫の液性免疫の担当細胞です。

この場合の形質細胞については、
子宮内膜という 「粘膜の免疫」
の細胞ですから、
形質細胞が悪さをしているとは
必ずしも言えません。
「粘膜免疫」 では、
分泌型IgA抗体を産生しています。

実際、正常なヒトの鼻粘膜や腸管粘膜に
多く存在しているのです。


粘膜の形質細胞は
自分の異常な細胞や死んだ細胞を
排除したり、
細胞の新生を調節したりする
良い働きもしているのです。

 

慢性子宮内膜炎の診断根拠と、
その炎症の程度にもよりますが、

対象となる方には、
強力な抗生物質治療、
あるいは、
大量の乳酸菌補給治療、
が効果的かもしれません。


ただ、
「無菌性炎症」 も含めて、
高度な炎症状態であるならば、

免疫細胞が攻撃的な状態ですから、

詳しい同種免疫検査の上、
対応した免疫的な治療が
さらに効果を高める
と考えられます。

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