最近、慢性子宮内膜炎が一つの話題になっています。 そのきっかけの一つが、ブログNo.541で紹介した論文です。 子宮内膜液の遺伝子検査で、無症状の人の子宮内膜にも細菌が存在しているという内容には驚きました。 膣内に細菌がいることは教科書レベルではっきりしています。そのほとんどが病原性のない常在菌です。 40年以上も前から、病的な膣炎は、不育症の原因ではないかと多くの研究がされましたが、結局、一時的な流産の原因ではあっても、繰り返す流産の原因ではないと考えられています。 子宮内膜液の遺伝子検査でも、細菌のほとんどが乳酸菌という常在菌であり、それ以外の細菌の遺伝子は見つかっていますが、その病原菌?が、どれほど悪影響があるのかはまだ不明です。 子宮内膜液の遺伝子検査以外の以前より行われている検査では、子宮内膜の表面を子宮ファイバーで見るか、子宮内膜の組織を採取して、細菌培養して細菌を見つけるか、子宮内膜の免疫組織染色検査で、形質細胞(CD138陽性)を見つけるか、の検査になります。 形質細胞は免疫細胞のBリンパ球が分化した細胞であり、同種免疫の液性免疫の担当細胞です。 この場合の形質細胞については、子宮内膜という 「粘膜の免疫」の細胞ですから、形質細胞が悪さをしているとは必ずしも言えません。「粘膜免疫」 では、分泌型IgA抗体を産生しています。 実際、正常なヒトの鼻粘膜や腸管粘膜に多く存在しているのです。 粘膜の形質細胞は自分の異常な細胞や死んだ細胞を排除したり、細胞の新生を調節したりする良い働きもしているのです。 慢性子宮内膜炎の診断根拠と、その炎症の程度にもよりますが、対象となる方には、強力な抗生物質治療、あるいは、大量の乳酸菌補給治療、が効果的かもしれません。 ただ、「無菌性炎症」 も含めて、高度な炎症状態であるならば、免疫細胞が攻撃的な状態ですから、詳しい同種免疫検査の上、対応した免疫的な治療がさらに効果を高めると考えられます。