想像妊娠という言葉を聞いたことありますか。 私が医学生であった40年ぐらい前に、講義のなかで知りました。 女性は、精神的な状態が、いかにホルモン環境に影響するかという典型例として、説明されていたのです。 40年以上前には、簡単な検査で妊娠しているかどうかはわかりませんでしたから、子供の恵まれない女性が、異常なぐらい子供がほしい、子供がほしいと念じると、生理が止まり、乳房が張ってきて、つわり症状が出現してくることがあったのです。 しかし、赤ちゃんは居ません。これが想像妊娠です。 このからくりとして、プロラクチンというホルモンが関係しているのです。 プロラクチンは、日本語訳として、乳汁分泌ホルモンと言われていますが、ストレスホルモン、または妊娠に伴う愛情ホルモンとも言われています。 過剰なストレス(中枢神経の興奮)によって、脳下垂体からプロラクチンが過剰に分泌され、そのプロラクチンが乳腺を刺激し、卵巣機能を抑制することによって、想像妊娠の状態になったのです。 また、甲状腺機能低下による手足が冷たい、身体が冷える場合にも、精神的に、心が冷えやすい抑うつ気分になりやすく、さらに、プロラクチンが過剰に分泌され、乳腺が刺激され、卵巣機能が低下することもあるのです。 医学的にプロラクチンは、免疫機構を攻撃的にもしますから、不育症、着床障害の原因のひとつと考えられています。 プロラクチンは、夜間睡眠時や排卵期に高値になりますので、潜在性高プロラクチン血症をみつけるためには、TRH負荷試験が必要です。 プロラクチンを正常化することにより、不育症患者さんの妊娠維持が向上したとする研究報告が、横浜市立大学病院産婦人科の平原教授らにより、1998年のアメリカ不妊学会専門誌にすでに発表されています。