「 PGT-A異常胚と診断され、
移植を拒否された高齢の患者さんが、
他院で
そのPGT-A異常胚の移植を受けて、
健康児を出産されている 」
という研究報告が、
2022年4月にありました。
(Hum Reprod, April 2022)
57の移植サイクル(平均年齢は41歳)
のなかで、
7人が健康児として出産し、
1人が先天性心疾患を持った児として出産
(出産後に手術をして健康を回復)
していると報告されています。
研究報告の約1週間後には、
ニューヨークタイムズ(米国の有名な新聞)に
この報告の重要性が取り上げられています。
胚の遺伝子検査は、
魅力的な検査ですが、
必ずしも正確ではない
ということと、
高額な検査であり、
胚へのダメージと、
施設間での技術の差もありますから、
慎重であってもよいと思います。
体外受精での妊娠、流産を繰り返され、
流産予防として、
PGT-A(受精卵の染色体検査)を受け、
Aランクの卵を移植したのに
再度流産された場合、
子宮内に原因がある可能性が
非常に高いですよ。
勇気を出して、
体外受精施設ではなく、
子宮の原因に特化した
医療機関
(不育症認定医、当院も含めて)を
受診されてはどうですか?
赤ちゃんを授かるために、
子宮内に原因があるかどうか、
専門的な
心身両面からの検査、治療をお勧めします。
抗リン脂質抗体を含めた
凝固系の検査・治療だけでは
不十分です。
EMMA、ALICE等の
子宮内フローラ(慢性子宮内膜炎)
検査・治療による
妊娠継続の効果については、
否定的な研究報告が多数あります。
基本的問題として、
受精卵は半分異物ですから、
同種免疫(母児間免疫)の異常と、
生殖ストレスの
複合的な原因が
多く存在しているのです。
着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)
の検査を受ける利点がありそうな方は、
35歳以上であり、
経済的余裕があり、
(一つの受精卵の検査費用が約5~8万円)
5日目の胚盤胞まで数多く容易に育つ方
(一つの受精卵の染色体異常率が約70%ですから)
と、思われます。
その出産成功率は
子宮内環境を正常に整えた場合でも
約50%ですよ。
胚盤胞まで数多く容易に育たない方は、
かえって費用と時間が無駄になる
可能性が高いので、
2~3日目の初期胚を2個毎、
複数回、移植したほうが、
費用的にも時間的にも
効率的かもしれません。
ただ当院の治療経験から、
高年齢で、
移植回数と流産回数が非常に多く、
当院の子宮内環境を整える治療をしても、
流産を繰り返され、
毎回、流産児の偶然的染色体異常を
経験された方々には、
本当に効果的な検査であり、
約60%の方が無事出産されています。
2021年3月、Natureという
信頼度の非常に高い医学誌に、
「胎盤には胎児に存在しない
染色体異常(モザイク現象)がある」
ことが報告されました。
(Nature 592, 80-85, 2021)
2020年1月より日本でも
臨床研究として行われている
#PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)、
以前は、
#着床前スクリーニング
と言われていた胚(受精卵)の染色体検査は、
胚の外側の胎盤になる細胞を採取して
検査していますので、
「その検査結果が、
胎児の結果ではないことがある」
ことが証明されたことになります。