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着床障害(ごく初期の不育症)

3回以上胚移植しても妊娠しないか化学流産の場合、着床障害と考えられますが、着床障害とは「ごく初期の不育症」と考えられます、というお話です。

移植の時期に問題があるかどうかの
ERA検査は、
近年注目されていますが、
否定的な報告もあります。

非常に信頼性が高い
米国医学会の発行する医学総合雑誌(JAMA)
の2022年12月号に、

ERA検査して移植の時期を決定しても、
標準的な移植の時期の生児出生率と比較して、
有意な改善はなかったことが、
発表されました。


研究参加者は、
PGT-A正常胚の移植を受けた767人であり、
研究設計は、
2018年5月より約3年間での
米国東部の30の多施設における
二重盲検無作為化臨床試験です。

(JAMA. 2022;328:2117-2125)

「妊娠成立、維持には
免疫の適度な活性化が必要」
であることは、
現在、明らかにされています。

また、免疫の予備刺激(プライミング)は、
免疫のプライミング効果として、
よくわかってきています。


ところで、
精液の中の精子以外の液体(精漿)には、
夫由来の可溶性抗原が存在しており、
自然の妊娠現象では、性交後、
子宮内膜ヘの精漿によるプライミングが起った
その約一週間後に、
卵管で受精した受精卵の子宮内膜への着床が
開始しています。


注目すべきことは、
「精漿による免疫的プライミングが、
その後に起こる着床現象に
有効性がある」

という可能性が近年、
マウスの実験で報告されていることです。


体外受精・胚移植では、
精漿によるプライミングはありませんので、
母体の免疫応答能が低下していれば、
着床に障害が起こる可能性が考えられます。

正常卵を子宮内へ受け入れない要因は
主に四つあります。

一つ目は年齢です。
卵巣と同じく子宮も加齢とともに老化します。

二つ目は気分です。
気分が悪いとすべての器官に悪影響します。

三つ目は免疫です。
免疫は卵の受け入れを助けますが、
バランスを崩すと不寛容になります。
妊娠の免疫には着床・妊娠を助ける免疫と、
攻撃する免疫があるのです。

四つ目はホルモンです。
ホルモンの状態が不良であれば、
卵を育てることができません。


四つの要因はすべて繋がっていますから、
四つの要因をより正確に評価して、
治療することが理想です。


私は不育症の臨床研究に
40年以上関わっていますが、

人の着床・妊娠初期の「治療」に関する研究は
倫理的な壁により、
ハイレベルな証拠は難しいのです。


当院の診療においては、
少しでも良い結果の確率を高めるため、
四つの要因を診て、
40年以上の治療経験も頼りに
手ごたえのある診療をしています。

発生5日目の胚盤胞を子宮腔へ
移植(着床開始)すると、
絨毛細胞(胎児側細胞)がアメーバのように、
子宮内膜の細胞間の結合組織を溶かして
奥へ侵入してきます。

侵入開始5日目ぐらいには、
子宮の血管を呼び込んで
原始的な胎盤循環を開始します。
(高感度妊娠検査ならば、hCG陽性になります。)


いつから妊娠したと言えるのでしょうか?
一般的には、
妊娠検査薬が陽性になれば妊娠ですが、
妊娠検査はhCGの有無の検査ですから、
感度が高ければ
予定の生理日前に妊娠になります。


着床開始時点で着床の窓のずれがあれば、
早々に発生を終了してしまいますが、

hCGが微量でも検出されたならば、
母児間の免疫が、
その後の発生過程に影響してきます。

 


体外受精の治療がうまくいっていないときは、

着床過程の「反復するごく初期流産」として
子宮の環境を専門的な検査と加療することが、
成功の近道と思いますよ。

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