子宮内で成長する赤ちゃん(細胞、組織)は、妊娠女性から見れば、「非自己」です。子宮内に旦那さんの皮膚「非自己」を移植すれば、100%拒絶されます。なぜ、赤ちゃんだけ、拒絶されないのでしょうか?それは、妊娠という現象が、「寛容」という世界を作り出しているからです。 平成22年4月に亡くなられた多田富雄先生は、世界で初めて、免疫細胞の中に、抑制T細胞という免疫系の暴走を抑える細胞を発見されました。免疫系は、「非自己」を拒絶するだけではなく、場合により、「 非 自 己 」 と 共 存 す ることもできるのです。また、免疫系は、精神・神経系の影響を受けています。 多田先生には、約20年前に名古屋で開催された日本生殖免疫学会において、ご講演いただきました。妊娠現象そのものが、寛容という免疫機構によって、成立しているからです。 多田先生の生前の最後のメッセージは、「長い闇の向こうに、何か希望が見えます。そこには、寛容の世界が広がっています。」という意味深いお言葉でした。 精神的に、「 寛 容 と い う 世 界 」 を受け入れたとき、不育症という苦難からも開放されると、私は思います。 不育症のひとつの治療法として、実際的には、各種の免疫検査により、拒絶反応が強いと判断された場合には、寛容を誘導する免疫療法が有効です。