「 私 は 悲 劇 を 愛 す る。悲 劇 の 底 に は何 か し ら美 し い も の が あ る か ら。 」私はこのチャップリンの言葉に深く共感しています。私は30年以上の不育症の治療のなかで、4000組以上の不育症ご夫婦を治療させていただき、1回の妊娠治療につき、約8割の成功率を残しています。今年は、16回の流産の後、17回目の妊娠治療で初めて、元気な赤ちゃんを出産された不育症患者さんも経験させていただきました。これまでに、非常に多くの不育症患者さんからの感謝のお手紙と元気な赤ちゃんの写真をいただいています。 本当にうれしいことです。自分の医師としての人生の生きがいです。神様に感謝しています。 でも、もっと深く心を動かされ私の記憶の中に焼きついて離れない患者さんたちがいらっしゃいます。どうしてもうまくいかず、年齢の壁に阻まれて、治療を断念した人たちです。 その悲しげな、そして、やさしいまなざしが忘れられません。 世界の喜劇王、チャップリンは世界中の人たちに笑いという心のプレゼントを与え続けた人ですが、悲劇的な運命に対しても、立ち向かい、受け入れる、受け入れるしかない心の深淵に人間の美しさを感じ取っていたのではないでしょうか。